1968年にアメリカで制作された西部劇映画です。主演のクリント・イーストウッドがイタリアに渡り、マカロニ・ウェスタンで世界的スターになった後のハリウッド凱旋作品となっています。監督はテッド・ポストで、後に『ダーティハリー2』でコンビを組んでいます。



クリント・イーストウッドのマカロニ・ウェスタン以前といえば『ローハイド』(1959年~1965年、米CBS)、テッド・ポスト監督を検索すれば、アメリカのTVドラマ『コンバット』『刑事コロンボ』などに関係したみたいでシニア世代には誠に懐かしい題名が出てきます。
時代も時代ですが、”真面目に正しい”ドラマを作っていたころで、この映画も単なる復讐劇に終わらず私刑と正義に正面から向かい合った良品と言えるでしょう。
ただ、惜しむらくは、音楽で、テーマ音楽はまんまマカロニ・ウェスタンで、バックには効果音のつもりかとも思わされるBGMともいえないような音が出てきます。音楽を担当したのは、ドミニク・フロンティアで、1980年にゴールデングローブ賞作曲賞を受賞し数々の名画の音楽を担当した人ですが当時はこんなのが流行ってたのでしょうか?
クリント・イーストウッドについは、シニア世代には頷いていただけると思いますが、1960年代後半では、同い年のスティーブ・マックイーンの機敏さやショーン・コネリーのダンディさに遠く及ばずでグレゴリー・ペックの不肖の弟なんて中傷があり決して好評ではなかったそうです。
もっとも、クリント・イーストウッド(1930年5月31日生)とスティーブ・マックイーン(1930年3月24日生)とショーン・コネリー(1930年8月25日生)が半年も違わずこの世に誕生していることにも驚嘆します。
冷徹に見ると西部劇スターとしては乗馬、拳銃やライフル銃の扱い方、格闘シーンのどれもずば抜けたものも見れず、まして相手女優の魅力を引き出すようなスマートさも持っていません。
しかしながら、普通、主演スターは自分の出番を終えるとさっさと自分のドレッシングルームなりトレーラーに戻り待機するかそのまま家かホテルに帰りますが、イーストウッドはそのままレオーネ監督またはシーゲル監督の隣に座って演出技術を身につけていました。この彼の撮影時の態度が長い目で見ると同業者との大きな差になってきたのでしょう。
1930年代中期に痩せ型で、適度にハンサム、そして長身であることで、ヒーロー像を定着させた功績はゲーリー・クーパーで、ヘンリー・フォンダとジェームズ・スチュアートが更に強化し、1940年代後半にグレゴリー・ペックが引き継いで、それを1970年代初頭に継承したのがクリント・イーストウッドだと言うことが出来るでしょう。
そして、イーストウッドは師匠シーゲルのまた師匠である巨匠ハワード・ホークスですら果たせなかった年齢による衰えの克服すら努力と情熱でやり遂げています。主演スター兼監督を80歳を越えてやってのけたのはイーストウッドが唯一で、しかも成功作であり名作といわれるものであることに敬服します。
物語は、カウボーイのジェド・クーパー(クリント・イーストウッド)は、突然9人の男たちに襲われ、騙されて買った牛により、牛泥棒として、リンチにあってしばり首にされました。今にもこと切れようとするところを助けられ、ジェドは囚人車でオクラホマに運ばれました。
だがここで意外にも、彼が、以前優秀な保安官であったことを知っていたアダム・フェントン判事(パット・ヒングル)から裁判官直属の保安官に任命されて、彼をリンチした9人の男の逮捕を命じられました。
西部にもようやく法と秩序が生まれ始め、政府は私的制裁を禁じたのですが、リンチは後をたたず、承認や証拠もなく犯人たちを捕まえることができずにいたのでした。そこで、ジェドは、無実でリンチを受けた当人であって犯人逮捕には格好の人物というわけです。
ジェドは復讐を保安官として合法化して9人を追うことになりました。1人、2人、3人と、ジェドは彼らを追いつめ射殺、あるいは絞死刑にしていきました。そんなある日、保安官の1人アルホーンが、死刑の主某者ウィルソン(エド・ベグリー)から示談金を預かって来ましが、ジェドはこれを拒絶しました。
ウィルソンは、ジェドを殺害しようと計りましたが、仲間の2人はこれ以上罪を犯すことを恐れ逃げ出し、ウィルソンの味方は、牧童2人となってしまいました。やがて、ジェドは、ウィルソンたちに狙撃され重傷を負い、雑貨店の女主人レイチェル(インガー・スティーヴンス)の家にかつぎ込まれ、手厚い看護をうけました。レイチェルの献身的な看病で彼は一命をとりとめました。
この間に、ジェドはいつしか彼女を愛するようになっていましたが、夫を無法者に惨殺された記憶を持つレイチェルは、彼の求愛を素直に受けとることはできませんでした。傷がいえたジェドは、早速ウィルソンの牧場へ向かいました。すでに待ちかまえていたウィルソンは、猛犬を放ってジェドを追いつめ、猛射をあびせましたが、ジェドの機転とガンさばきで、2人の部下を射殺し、もはやこれまでと悟ったウィルソンは、自ら絞首して果てました。
ジェドはフェントン判事のもとに戻り、復讐はすみ仕事はこれで終わりとバッジを返そうとします。しかし、判事は、保安官の仕事は終わりではなく、ジェドの前に、逃亡したウィルソンの2人の仲間の逮捕状をさし出しました。