凸凹玉手箱

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映画『帝一の国』若手イケメン俳優たちが輝いています!!

 

この映画『帝一の国』は、古屋兎丸による漫画作品の実写映画で、監督永井聡、主演は菅田将暉で2017年4月に公開されました。

映画化に厳しい原作ファンからも高い支持を得ていて、『帝一の國』を「いまノッてる菅田将暉を主演に起用したありがちな漫画原作映画か」と二の足を踏んでいる人や、学園物に門外漢そうなシルバー世代にも観て欲しい映画です。

 

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この作品の面白さは、生徒会選にまつわる陰謀や駆け引きだけでなく、ギャグ映画としても成立している点です。登場人物たちが渾身の真面目な演技で、全力のギャグを入れてきます。

原作に沿ったシュールなギャグを随所に挟み、それを寒くみせない演技力・演出が見事です。絶妙なバランスで野心とギャグが組み立てられています。

目次

 

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1.あらすじ

1)プロローグ

赤場帝一は政治家の父とピアニストの母の間に生まれました。父・譲介(吉田鋼太郎)もまた海帝高校の出身でしたが、生徒会長選で東郷という男に破れ、政界入りしてからも東郷にあと一歩及ばないキャリアが続いていました。
譲介は息子である帝一に自分の夢を託し、ピアノに夢中になる帝一からピアノを取り上げていました。


2)背景

舞台は名門私立高校「海帝高校」、政治家や財界トップといった日本が誇るエリートを輩出する名門校であるこの高校では、「生徒会長になること」が将来のキャリアに大きく影響します。

成績優秀者として新入生代表挨拶をまかされた主人公の赤羽帝一(菅田将暉)は、「僕は作る。僕の国を」と心に誓っています。

帝一は「僕の国をつくる」ために貪欲に行動していきます。あまりにも貪欲すぎるその姿に、思わずむふっと笑ってしまうほどでした。

クラスルーム長に任命された帝一は、生徒会長への投票権を持つ「評議会」入りを果し、中学からの同志の榊原光明(志尊淳)を副ルーム長に任命して、生徒会長への道を突き進みます。


3)ライバル登場

一方、帝一の父のライバルである東郷の息子の東郷菊馬(野村周平)、そして大鷹弾(竹内涼真)という男もルーム長に選ばれていました。弾にはカリスマ性があり、異彩を放つ生徒でした。帝一はそのカリスマ性に激しく嫉妬ました。

 

4)野望への第一歩

生徒会長になるため、翌年の生徒会長候補を調査する帝一と光明。有力な候補者は森園億人(千葉雄大)、氷室ローランド(間宮祥太朗)。特に氷室は、現生徒会長の票固めをした張本人でした。生徒会長を目指す帝一とライバルである菊馬は、氷室へ近づいていきます。


5)野望の破綻

帝一の父・譲介と氷室の父が犬猿の仲であることが判明しました。譲介が氷室の父から恨みを抱かれていることを知った菊馬は、氷室に告げ口し、氷室は帝一を切り捨ててしまいます。


6)苦肉の寝返り

帝一は、今まで氷室につくために非礼を行なっていた森園陣営につく作戦に出ました。森園に対し深くお詫びをし、また森園陣営についていた弾のおかげもあって、森園陣営を大きく動かすことに帝一は成功します。


7)大逆転

極めつけは、フォークダンスのマイムマイムを校内放送で流し校庭にダンスに誘って、氷室から現金を受け取り彼についた者に童心に帰って罪悪感を感じさせました。

こうして、森園を官軍としてアピールすることにより、氷室派についていた運動部を森園派に引き込むことに成功して、森園の勝利に貢献しました。

人の心を動かす森園と金で人を動かす氷室の対決が五分五分になってきたところで、その状況を打破したい菊馬によって、帝一の父が収賄容疑にかけられてしまいます。


8)優勢の失墜

そのせいで森園陣営のイメージダウンが起きてしまいます。帝一は拘置所で出会った父に対し、激しく責め立てました。帝一が「僕の国」にこだわっていたのは、自分の国をつくることで誰からも大好きなピアノを邪魔されないためでした。帝一は激しく落ち込み、部屋に引きこもってしまいます。


9)回復・逆転

良きライバルとなった弾や、幼なじみで恋人の美美子の励ましもあり、生徒会長選の投票へ行くことにした帝一でしが、実は帝一に劣等感を抱いていた菊馬によって行く手を阻まれてしまいます。

帝一と菊馬が取っ組み合いをしている最中も、生徒会長選は続いていきます。弾は森園陣営についていましたが、白票を投じて、氷室VS森園は同点になりました。最終決定は現会長に委託され生徒会長は最後に森園を選びました。


10)新たなる展開

森園生徒会長による制度改革により、生徒会長の投票方法が変わった1年後、帝一と弾、菊馬は生徒会長候補となっていました。全校生徒からの投票となり、ほぼ帝一と弾の一騎打ちとなっていました。

菊馬は帝一陣営に自ら移動し、その後締め切り直前で弾に投票。帝一を裏切る作戦に出ましたが、光明がその動きを察知していたおかげで、帝一は投票の結果が出る前に弾に生徒会長を譲りました。

「負け」ではなく「勝ちを譲る」ことで、全校生徒の自身への強い印象を残した帝一は、生徒会長就任記念のピアノ演奏で「マリオネット」を演奏します。“操り人形”を意味するその曲を弾きながら「君たちのことだよ」とつぶやき、映画は終わります。

 


2. キャスティング

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菅田将暉竹内涼真といった今をときめく人気イケメン俳優に加え、志尊淳や千葉雄大、さらに間宮祥太朗野村周平鈴木勝大といった顔ぶれがメインキャストとして出演しています。

一見すると女性向けで、とにかくイケメンを集めた映画に思えるかもしれません。とにかく完璧と高評価の菅田将暉が放つ圧倒的な存在感をはじめ、どの俳優もドラマや映画で引っ張りだこのイケメンたちが躍動します。


1)菅田将暉

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菅田将暉が、主人公の高校生・赤場帝一を演じます。この帝一が「とにかく完璧」と、映画公開以降、原作ファンの間においても話題になりました。帝一の端正な顔立ちの再現はもちろんで、まっすぐすぎるほどの野心に突き動かされている姿は、まさに原作通り。

原作を知らないでも、冒頭の独白シーンを観れば彼のキャラクター性や魅力に引き込まれるはずです。菅田の絶妙な間、声の張り方、瞳の演技が独特な笑いをもたらして、本作のコメディの側面を支えています。

なかでも、吉田鋼太郎演じる帝一の父・赤場譲介とのテスト採点のシーンは見どころです。観終わったあとで、ふと「理科ァァァァアア」と叫びたくなるはずです。

 

2)野村周平

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帝一のライバルであり、その卑劣な性格で相手を貶めようとする東郷菊馬役には、映画『ちはやふる』シリーズで真島太一役を演じた野村周平です。性格以上に独特なビジュアルが話題を呼びました。

 

3)竹内涼真

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竹内涼真演じる大鷹弾は、まさにパーフェクトイケメンです。父とは死別して、病気の母がおり、下の兄弟たちの世話をしながらバイトを掛け持ちして生活費と学費を稼ぐという、絵に描いたような苦学生という人物です。

これだけでも好感度が高いキャラなのですが、成績と運動神経はエリート校のなかでもトップクラス。さらに性格もよく、これ以上ないほどの高スペックなイケメンです。そして竹内が演じることによって相乗効果を発揮し、爽やかさ度マックスなキャラクターに仕上がっています。

野心と策略が渦巻く校内で、弾は生徒会長選にも興味がありません。アクの強いそれぞれのキャラのなかで、圧倒的な爽やかさによって、帝一たちとは別ベクトルの存在感を放っているのです。

家事もそつなくこなし、帝一たちに手料理を振る舞うシーンのカッコよさは、誰しもが思わずキュンとしてしまうクオリティでしょう。


4)志尊淳

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榊原光明役は、舞台に戦隊、近年はドラマで活躍する志尊淳です。イケメン俳優界広しといえども、これほどまでに「にゃん」が似合う成人男性はいるでしょうか!?と、多くの視聴者が頭を抱えるほどのかわいさなのです。

性別が曖昧になるほどのかわいさを持ちながら、帝一の右腕として彼を信じ、助言を送って、静かに寄り添う姿に、男女問わず心を奪われるファンが続出しています。


5)間宮祥太朗

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勝つために手段を選ばない性格の金髪ロン毛・氷室 ローランドを、『ライチ☆光クラブ』の実写版でも出演した間宮祥太朗が好演しています。その容姿に反して、『全員死刑』などの、バイオレンスかつ強烈な映画に主演で出演するなど、ある意味氷室の性格のように、唯我独尊なのかも知れません。何といっても容姿に加え声が素晴らしい俳優さんです。


6)千葉雄大

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帝一の1学年先輩の森園億人を演じているのは、千葉雄大です。かわいい役や優柔不断な役の多かった千葉が、今作では冷静沈着な黒縁メガネの森園を好演しています。柔和な笑みのなかに見え隠れする、底知れぬ怖さを見事に表現しています。

ビジュアルにもハマっており、学ラン姿に黒縁メガネ、前髪から覗く大きな瞳で戦略を練る姿は、まさに原作のコマから飛び出してきたようです。

 

7)吉田鋼太郎

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帝一の父の赤場譲介で通産省官僚を演じています。海帝高校のOBで、東郷菊馬の父・東郷卯三郎に一票差で敗れ、生徒会長に落選した過去を持っています。

前述のように、大鷹弾の受けた入学試験問題を帝一がやり直し、それの採点結果を確認するシーンは弾と帝一の戦いというより、菅田将暉吉田鋼太郎の演技バトルといった趣さえありました。


3.みどころ

1)原作の世界観

独特な世界観を再現し、原作へのリスペクトが実写映画成功の鍵でした。

漫画が原作の映画の場合、原作の名前と設定だけを借りてオリジナルすぎた展開を繰り広げる実写映画は、原作ファンから敬遠されがちです。

しかし『帝一の國』は、随所に原作へのリスペクトが感じられます。各キャラが原作の解釈から逸脱せずに、映像ならではの音楽や見せ方で、原作ファンも納得する海帝高校を作り出しているのです。

 

2)原作へのリスペクト

その最も代表的な例は、海帝祭開会式での「ふんどし太鼓」を行うシーンです。原作漫画では生徒会メンバーがふんどし一丁になり、汗だくになりながら和太鼓を披露しました。

そして映画でも同様に、全員がふんどし姿になって全力で和太鼓を叩くのです。その姿と迫力はまさに原作通り。さらにこのシーンの撮影のために、出演者は脱毛を徹底的に行ったそうです。

出演者の体を張った熱い演技から、気合と心からのリスペクト精神を感じるのではないでしょうか。


3)マイムマイム

「マイムマイム」が唐突に始まります。小学校の時、体育の授業で、運動会で、必ずやりました。もうすっかりマイムマイムなんて、フォークダンスなんて、日常生活で思い出すこともないのに、音楽を聞いたら途端に振付全部思い出しました。

マイム、マイム、マイム、マイム、マイムベッサッソンの何語だかも不明の歌詞も強烈な刷り込み。いったいマイムマイムって何なんでしょう。どうして、どの小学校でも同じことやってたの?今の子たちは知っているの?次から次へと新鮮な疑問が沸いてきます。

マイムマイムは、旧約聖書イザヤ書とも関連の深いイスラエルの古い民謡で「マイム」は「(井戸の)水を汲む」、「マイムベッサッソン」は「喜びをもって、救いの井戸から水をくむ」というような意味になるそうです。乾燥地帯に入植した人々が生命線となる井戸水の水源を掘り当てた喜びを表現した歌と踊りです。

我々の知っている振付は、イスラエルでの実際の踊りとほぼ同じだそうで、イスラエル人もびっくりだそうです。

日本で普及したきっかけは、戦後やってきたGHQの教育担当官がたまたまフォークダンスが好きだったから、という単純な理由だったようです。なんとなく楽しい節だし、たいした娯楽のなかった当時の日本人の間に新しいリクリエーションとして瞬く間に普及していったようで、昭和30年代頃から小中学校の学習指導要領でフォークダンスが義務づけられたらしいです。

この刷り込まれた郷愁みたいなものが帝一たち森園派の始めた、マイムマイムの踊りの輪を瞬く間に広げてゆきました。


4. 原作未読の人へ『帝一の國』を楽しむポイント

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原作がある映画の場合、原作を知らないと十分に作品を楽しめないのでは、という懸念を抱く人もいるかもしれません。その点、『帝一の國』は原作を知らない人も楽しめる作品です。

ファンタジーのように独自設定もないため、事前に知っておくべき知識もそこまでありません。美麗で優秀なエリート男子高校生たちが熱く火花を散らすことを抑えておけば十分楽しめることになります。

原作は『ライチ☆光クラブ』で知られる古屋兎丸が手がけ、単行本は全14巻で完結しています。映画では削られてしまった、帝一が2年生、3年生になった際のエピソードも必見です。

また、あれだけの野心を抱いていた帝一がその後どうなったのかも描かれているので、映画で気になった人はぜひ漫画でその結末を確かめてみてください。


5. 映画と原作のここが違う

もとから原作ファンだった人たちからの評判も良い映画『帝一の國』ですが、やはり原作を知っているからこそ気になってしまう部分もあります。

本作は、実写映画にありがちな続編ものにせず、1本で完結の形で制作されました。スピード感もあり、まとまっていますが、やはり駆け足感は否めません。とくに後半は、原作で人気だった合宿エピソードが削られており、人によっては物足りないかもしれません。

その一方で、「帝一と菊馬の殴り合いの喧嘩」という映画オリジナルシーンが盛り込まれており、原作とは少し違った展開を楽しむことができることになります。


6.まとめ

やはり、なんといっても菅田将暉の映画です。もう芸能界での立場を確立してしまった感もあります。

物故した志村けんとW主演で2020年12月公開予定であった『キネマの神様』が観れないのは残念至極です。