この映画『エリジウム』は、ニール・ブロムカンプ監督・脚本による2013年のアメリカ映画です。主演はマット・デイモン、他ジョディ・フォスター、シャールト・コプリーなどで、製作費1億1500万ドルのSFアクション大作です。
「エリジウム」とは、ギリシア・ローマ神話で、神々に愛された者や英雄が死後に住むという、地の西端にあるとする楽園のことを言います。ちなみに、フランスの「エリゼ宮」や「シャンゼリゼー」という名称はこの語にちなんでいます。
人口増加による環境破壊で荒廃していた2154年の地球では、ごく限られた富裕層はそんな地上から「エリジウム」と呼ばれるトーラス型(ドーナツ型)のスペースコロニーへと脱出していました。一家に1台備え付けられた、あらゆる病気を治す医療ポッドのおかげで、尽きない寿命で優雅に暮らしています。
そんな中、地上の工場で劣悪な労働環境の元働いているマックス(マット・デイモン)は、職場の事故によって致死量の照射線を浴び余命5日を宣告されてしまいます。絶望したマックスは唯一の望みとなった「エリジウム」の医療ポッドでの蘇生を果たすべく、旧知の闇商人スパイダー(ヴァグネル・モーラ)に接触し、望みをかなえる為に取引を持ち掛けられました。
取引とは、エリジウムの住人でアーマダイン社CEOのジョン・カーライル( ウィリアム・フィクナー)を誘拐しその脳にインプットされている、「エリジウム」のリブートプログラムをダウンロードしてくることでした。
なんとか瀕死のカーライルからプログラムをマックスの脳にダウンロードしたものの、地球と「エリジウム」を統括するエリジウムの防衛庁長官で地球市民を監視するCCB(民間協力局)の総責任者、ジェシカ・デラコート(ジョディ・フォスター)の命を受けた、地球に駐留しているCCB(民間協力局)所属の傭兵の親分、M・クルーガー(シャールト・コプリー)、の追撃を受け重傷を負ってしまいます。
マックスは幼馴染で今でも思いをよせる看護師のフレイ(アリシー・ブラガ)に助けをもとめます。フレイは、娘マティルダ(エマ・トレンブレイ)が白血病で余命いくばくかもない状態で、「エリジウム」の医療ポッドに入れて救う事を望んでいました。
プログラムをリ・ブートすることでエリジウム市民の権利を地球上の非エリジウム市民に与え公平な世界をつくることができ、マティルダも医療ポッドで救うことができるようになるわけです。ただ、プログラムをダウンロードする時にプログラムのパッケージ(マックス)は死んでしまうのですが。
こうして、マックスの脳にあるプログラムをめぐって、防衛庁長官デラコート、闇商人スパイダー、傭兵クルーガーとの争奪戦が繰り広げられます。
SF映画というものは、リアリティについて、その設定のユニークさや面白さ、それらを繋ぐ必然性がしっかりしていれば、さほど問われなく、また、いちいち問うていては物語は成り立たちません。ニール・ブロムカンプ監督は『第9地区』(2009年)でそれらを見事にクリヤーしました。次作の『エリジウム』は当然ながら強い期待をもって観ますが、結論としてはもう一歩といったところで、残念ながら突っ込みどころが多すぎました。
この映画のストーリーのキーである、あらゆる病気・怪我を治す「医療ポッド」、信じられないほど脆弱な「エリジウム」の防御システム、傭兵の親分、M・クルーガーの存在、地球上から「エリジウム」に接近するシャトルをロケットランチャーで撃ち落とす、その他、ミーアキャットはジャングルでなくサバンナに住んでいます。
それにしても、この監督のディテールに対するこだわりがマニアックすぎるところはあちこちにあるものの、豊富な資金に裏打ちされた迫力ある映像や、マット・デイモンのスター性にも助けられて、SF大作としての体はなしており、それなりに楽しむことができました。