凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『亜人』原作コミックス、アニメを観ていない人向けに?!

 

この映画は、コミックスからアニメそして実写となったわけですが、存在を知ったのは深夜放送でアニメを数分観てからでした。もうこの歳になるとコミック週刊誌を購読することもなく、アニメも目新しいものにはなかなか観ることも無くなりました。それがたまたま観るものもなくチャンネルをいじくっていると目についたものです。

 

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とにかく、設定が奇抜でよくできていて、「何度でも生き返る死なない新人類」に惹かれました。コミックスから、あるいはアニメからと入口によって印象は異なってきます。そういう意味ではほとんど先入観なしに観ることにことになりました。

 

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何といっても綾野剛です。しかも強烈なカウンターヒーロー。映画は悪役が良くないと面白くありません。綾野剛絡みでは、『S-最後の警官-奪還 RECOVER OF FURTUR』の国際テロリスト正木圭吾役のオダギリジョーが印象的でした。本作品の「佐藤」の綾野剛もこれに勝るとも劣らないできでした。主役永井圭の佐藤健も好演でしたが、完全に綾野剛に喰われてしまったといっても過言ではないでしょう。

その「亜人」の設定について整理してみました。

 

・1990年代にアフリカの戦場で初めて発見されました。再生能力以外は一般人と同じと思われたため恐怖は薄れ、後に次世代人類としての研究対象と定義されました。
・作中当初の段階では、亜人は世界で47人、日本では永井圭以前は2人しか発見されていませんでした。そのため、亜人が発見された場合は、国・政府・警察・厚生労働省は全力をもって捕獲しようとします。
・外見は通常の人間と同様ですが、死亡した際には即座に蘇るという驚異的な再生能力を持っています。
・ただし死に至らない限り再生能力は発揮されないため、例えば手足を失ってしまった場合には一旦死亡することでしか再生することはありません。
・痛覚は、死なない限り通常の人間同様に存在します。そのため、人体実験などで何度も殺されれば、その都度、痛みや苦しみを味わうこととなります。
・切断された体の一部は近くにある場合は再生時に本体に回収されるが、本体から離れた場合には頭部であっても回収されず、新たなパーツを作り補います。
・「黒い幽霊」を操ることができる。「亜人」の操ることができる自身の分身のような存在で、黒い粒子状の人型の雲のような状態であったりするが、質量が加わり強烈な打撃を与えることができます。

 

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肉体を損傷して不利な状況に追い込まれてしまっても、即座に「リセット(死亡)」すれば元の状態に戻れ、普通は「いかに死なないようにするか?」を考えるものですが、『亜人』の世界では「いかに効果的に死ぬか?どのタイミングで死ぬか?」を考えなければいけません。この発想はいままでにないものでしょう。

 

要は、自殺が戦略・戦術になって、状況を変えるべく銃で自分を撃ってリセット。銃がなければナイフで首を掻き切ってリセットとなります。従って、「亜人」を攻撃する側は逆に「死なれてはいけない」から、自殺させないように対応し、麻酔銃を使って眠らせるとか、工夫しなければなりません。そういう独特のバトル展開が新しくて面白いのです。

 

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「失敗したら死んでリセット」っていうのは、トム・クルーズの『オール・ユー・ニード・イズ・キル』でも似たようなことがありましたが、あちらは時間を巻き戻すパターンでしたし、自らリセットの為に自殺するところまでいかなかったように思います。

 

それと、アクションが秀逸でこの様な設定なので、格闘も変わったものになりましたが、質感・タイミングもいうことなしで、まさか邦画でこんなにレベルの高いアクションを観られるとはと感心しました。

特に綾野剛のガンアクションも素晴らしく、アサルトライフルのマガジンをリロードする動作とか、大勢の敵を容赦なく撃ち殺していく場面とか、クールにカッコ良く、ゾクゾクさせてくれました。

 

本作のアクション監督は、おなじく佐藤健主演作『るろうに剣心』でスタントコーディネーターを務めた大内貴仁で、アクション自体の凄さに加え、画面構成や編集テクニックなど「アクションをカッコ良く見せる技術」に精通しているからこそ、あれ程のクオリティが実現出来たのでしょう。

 

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この実写版『亜人』については、原作コミックスは既刊十数巻(未完結)、アニメは2クールで、劇場版アニメも3部作での公開でした。ただでさえ非現実的な設定が多いだけに、未完結の内容を1本の実写作品にどう落とし込むか、ファンであれば期待と不安で興味深々となるかも知れません。

 

よくある続編ありきで結末を曖昧にして作られる作品も多いなか、『亜人』は少しは続きを匂わせながらも、2時間弱でしっかりとストーリーを完結させていた点が高く評価できるでしょう。

 

こうした実写映画の場合、原作に忠実な作品と、オリジナリティが強くなる作品の大きく2種類に分けられて、本作は完全に後者のパターンでしたが、「アクション映画」としての再構成が大変潔く、原作やアニメと異なり実写であるが故の制約がありながらも、CGとの有機的な融合ともあいまって、実写版としては大きく成功を収めました。