この映画『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK(Jack Reacher: Never Go Back)』は、2016年製作のアメリカ合衆国のアクション映画です。
リー・チャイルド原作の小説「ジャック・リーチャー」シリーズ第18作の「Never Go Back」を実写映画化しました。映画では『アウトロー』の続編となります。
トム・クルーズは前作に続いて主演(兼・製作)、監督は『ラスト サムライ』でも組んだエドワード・ズウィックですが、興行的には前作に及ばず、この作品を最後にトム・クルーズは出演しない事を、原作者のリー・チャイルドが明かしています。
目次
1.エピソード
原作シリーズでは、2メートル近い身長と100キロ以上の体重の巨漢でダークなイメージのジャック・リーチャーを、小柄で明るいイメージのトム・クルーズが演じることについて、アメリカでは映画製作発表の際話題となりました。
原作者チャイルドは、リーチャー役を演じさせたい俳優については、「ブルース・ウィリスをもっと長身にして、さらに体格をよくし、首の上にウィリアム・ハートの頭を載せた男」と述べ、また、後にはラッセル・クロウの名を挙げていました。
しかしながら、プロデューサーのマッカリーからリーチャー役にトム・クルーズをキャスティングしたいと聞かされると、「私が作ったキャラクターを演じるのに、史上最大の映画スターを断る理由はないね」と承諾したといいます。
クルーズ自身「もし彼(原作者リー・チャイルド)がOKしなければ、この役を引き受けなかった」と語っています。
2.ストーリー
1)プロローグ
数人の人々がレストランの外に集まっていました。現場に到着した警察が、4人の男が倒れている現場を確認します。目撃者は、食堂に座っている男がものの数秒でやっつけてしまったと証言します。そこへ踏み込んでいく地元の保安官達、レイモンド・ウッド保安官と彼の部下は、顔に返り血のようなものがついたジャック・リーチャー(トム・クルーズ)がレストランのカウンターに座っているを見つけて、彼に尋問を開始します。
ウッドはリーチャーに手錠をして、連行しようとしますが、リーチャーは「90秒以内に電話が鳴り、憲兵が来てウッドを逮捕する」と予言します。すると、本当に電話がかかってきて、ウッド保安官が汚職の疑いで連行されました。
軍事基地の不法入国社の人身売買での罪で、軍事警察に逮捕されたのです。現場を去り、ヒッチハイクで雨の中モーテルへ宿泊するリーチャーでした。
2)ターナー少佐の逮捕と隠し子疑惑
その後、リーチャーはウッド逮捕に協力した、憲兵隊時代の同僚、スーザン・ターナー少佐(コビー・スマルダーズ)と電話で話をしました。彼女は、軍にいた時にリーチャーの窮地を救ってくれた信頼のおける同僚で、お互いに密かに好意を持っていました。二人は、1週間以内にワシントンDCのターナーのオフィスで会う約束をしました。
ワシントンに着いたリーチャーは軍本部へ行き、ターナーの部屋へ案内されると、そこにはターナーの代わりにモーガン大佐(ホルト・マッキャラニー)が座っていました。モーガンは、ターナー少佐が秘密漏洩の疑いで逮捕されたとリーチャーに告げました。リーチャーは、リーチ軍曹に話しかけ、ターナーの容疑を晴らせる弁護士がいないか尋ねました。
リーチャーは、ダイヤー基地でモアクロフト大佐を見つけ出して、ターナーへの面会と、彼にターナー少佐の拘束を解いて、外に出してくれるようにリクエストします。モアクロフトはこれを断り、リーチャーがキャンディス・ダトンという名前の女との間にできた子供の父親であるという、軍に対して起こされた親権訴訟が持ち上がっている事実を告げるのでした。
3)パラソース社の追跡
モアクロフトから密かに抜き取った子供、サマンサ(ダニカ・ヤロシュ)の写真を店でチェックするリーチャーでしたが、その時、店の外にあとをつけてきている車に乗った二人組の男に気づいたリーチャーは、男たちをぶちのめします。男のIDカードを探ると、「パラソース社」と書いてありました。そして、二人組のボスである、ハンター(パトリック・ヒューシンガー)という名前で知られる男にもつけられていました。
リーチャーは彼の娘とされるサマンサの後を追い、食料品店でサマンサが万引きをする所を目撃します。店を出て、サマンサに、キャンディスの娘なのか問い詰めました。サマンサは、キャンディスが以前売春婦だったので、また母を買おうと近づいてきたのだと勘違いし、リーチャーから立ち去りました。
4)リーチャーの逮捕
別の日、モアクロフトは、リーチャーにチベリとミルコビッチというターナー少佐の部下で、タリバン掃討作戦でアフガニスタンに従軍し、近距離射撃で友軍から殺害された疑いがある二人の憲兵についてのファイルを与えました。ターナーは、本件をちょうど調査中だったというのです。
ハンターは情報を漏洩したモアクロフトを彼の自宅で見つけ出し、リーチャーに情報提供した件で、彼を残酷に殴打した挙句、これ以上の口封じと見せしめのため、殺害してしまいました。
翌日、リーチャーは再び軍本部に呼び出され、サリバン弁護士とエスピン大尉(オルディス・ホッジ)とともに、モーガンから、モアクロフトを自宅で殺した容疑で尋問されました。罠だと気づいたリーチャーが黙秘権を行使しようとするも、その場で軍法を特別適用され逮捕・拘束されてしまいました。
5)ターナーと逃走とハンターの追跡
リーチャーは、拘束されてダイヤー基地の独房へ向かう時、数人の男が、ターナーとリーチャーを殺そうと留置所へやってきたことに感づきました。彼はサリバン弁護士にサンドイッチを持ってこさせ、そのすきにエスピン大尉を気絶させて彼の制服を奪い、ターナーの独房へ入っていきました。
まさに、男たちがターナーを殺そうとしていたときでした。リーチャーは全員をぶちのめし、ターナーを外へ逃がします。彼らはすぐにみつかり、他の護衛達に追いかけられますが、ターナーとリーチャーは、パトカーを奪って逃げ出しました。
ハンターも二人を追いかけ、レストランの厨房で激しく戦闘します。ターナーとリーチャーの息があわず、ハンターにやられかけたところへ、地元の警察官が来て、ハンターを追い詰めました。そのすきにターナーとリーチャーは裏から逃げ出し、ハンターも警察官を殺害して、何食わぬ顔で現場を抜け出すのでした。
6)娘サマンサ
リーチャーとターナーはモーガン大佐がこの陰謀に加わっていることを悟り、翌朝モーガンのところに行き、モーガンからパラソース社とのつながりや、ターナーの調査ファイルを問い詰め、情報を引き出しました。
その後、ハンターがモーガンのところに現れ、言い争った後、モーガンを電話機で殴り殺してしまいます。そして、リーチャーの指紋が電話機に残っていたので、モーガンの殺害もリーチャーの犯罪とされてしまうのでした。
リーチャーはモーガンから押収したデータを調べると、そのうちのいくつかはサマンサのものでした。彼はリーチへ連絡を取り、秘密裏にパラソースについて調べるよう依頼します。リーチは、リーチャーにモーガンが殺されたことと、リーチャーの指紋が電話機から見つかったと告げました。
サマンサの危険を彼とターナーが察知し、サマンサの育ての親の家に行くと、すでに育ての親が暗殺者達に殺されたあとでした。
部屋中を探す二人。と、その時、隠れていたサマンサがキッチンシンクの下から半狂乱で出てきました。落ち着かせ、彼女を連れ出しました。
リーチャーとターナーはサマンサをターナーの母校であるペンブローク学校へと連れて行き、そこで一時的な保護を依頼しますが、サマンサが電話を取り出し、メールチェックをしたことで、サマンサの居場所をハンターにつきとめられてしまいました。二人はサマンサを連れ出し、サマンサの携帯電話を捨て、その場を急いで立ち去るのでした。
7)ニューオーリンズへ
リーチャーはリーチ軍曹からの調査報告の電話を受け、そこでダニエル・プルドムと名乗る男についての情報を得ました。アフガニスタンのスペシャリストで、チベリとミルコビッチが殺害される場に居合わせた目撃者でした。また、リーチからパラソース社が私設軍事会社で、アフガニスタンにて武器の密売を行っていた調査報告を聞きました。
現場の唯一の目撃者であるプルドムと面会するため、リーチャー達はニューオーリンズに向かいます。サマンサが学校で学生から盗んだクレジットカードでチケットを購入するのでした。
飛行機の中で、リーチャーはハンターの部下を見つけ出し、彼らを殴って意識不明にさせ、彼らの携帯電話から情報を取り出します。リーチャーは眠ったふりをして、サマンサがターナーに彼女の父親がどんなだったのか話しているところを目をつぶって聴いていました。
空港に到着すると、ハンターはリーチャー達をみつけ、空港内で激しく追いかけるが、リーチャー達はこれを振り切りました。
8)証人プルドム
ニューオーリンズにて、サマンサは何が起こっているのか二人に説明を求めました。リーチャーはサマンサの母親から、親権訴訟を起こされており、彼が彼女の父親であるかもしれないと告げ、そのために彼女がリーチャー、ターナーと同じように追われていることを告げるのでした。
リーチャーは、まずプルドームの妻から、プルドムが麻薬中毒になっていることを聞き出します。翌朝、リーチャーとターナーは、スラム街の廃ビルでプルドームを見つけ、尋問をしました。
アフガニスタンで武器弾薬の監視係だったプルドムは、パラソース社から賄賂をもらい、武器弾薬をパラソース社経由で地元の武装集団に横流しをしていました。
ある日、パラソース社と値段でもめたプルドームは、突然テロリストたちから襲撃を受け、事態を把握した憲兵隊にいたチベリとミルコビッチが調査中に、彼らはプルドムの見ている前で、至近距離からハンターに殺されてしまいます。
恐ろしくなって現場から逃走したプルドムは命だけは助かりましたが、帰国後にアフガニスタンで手を出した麻薬中毒になってしまったというのです。
9)ハークネス将軍の逮捕
リーチャーとターナーはエスピン大尉とコンタクトを取り、彼をプルドムと対面させ、事実を話させました。話に納得したエスピンがプルドムを連行しようとしたところ、そこでハンターたちと戦闘になりました。
エスピンは足を撃たれ、プルドムはそこで殺害されてしまいます。リーチャーとエスピン大尉はハンターたちと戦い、なんとかその場を凌ぐと、エスピンを守り、脱出しました。その足で、パラソース社の武器横流しの証拠を押さえるため、空港へと直行しました。
空港で荷物を改めると、武器自体は横流しされていませんでしたが、武器の中に大麻が入っていました。これが現在のパラソース社の資金源であると判明し、黒幕であるパラソース社のCEOでもあるハークネス将軍(ロバート・ネッパー)がその場で逮捕されました。
10)サマンサの危機
ハンターたちは、一方で、再びルームサービスをオーダーするためホテルでカードを使おうとしたサマンサの居場所を逆探知し、現場のホテルを襲撃しました。サマンサは懸命にハロウィン・パレードの人並みに隠れて逃げました。
リーチャーとターナーはホテルに急行し、サマンサの居場所を探しました。そして、ついにハンターが先にサマンサを捕まえ、リーチャーに銃を捨てないとサマンサを殺すと威嚇します。リーチャーが銃を捨てたそのすきに、サマンサはハンターの銃をつかみ、リーチャーがそこへタックルしました。リーチャーとハンターは、殴り合いになり、最後にはリーチャーがハンターをKOし、殺してしました。
11)エピローグ
ターナーは無実が証明され、旧ポジションである少佐へと戻りました。ターナーとリーチャーは、また別の日にディナーの約束をするのでした。
サマンサは、リーチャーを食堂で見つけ出しました。リーチャーは彼女が本当の娘かどうか真相を突き止めようとしていました。食堂の外で母とリーチャーのやり取りを見ていたサマンサは、リーチャーが本当の父親ではないことを悟ります。ぜなら、食堂でリーチャーのコーヒーを入れていたのはキャンディスで、二人は全くの知り合いではないことが明白だったからです。
結局ペンブローク学校へ通うことになったサマンサは、リーチャーとハグし、別れ際に彼のポケットに携帯電話をそっと忍び入れました。
映画は、リーチャーが道路でヒッチハイクするところで終わります。彼は、サマンサからの電話でテキストメッセージを受け取ります。「もう会いたい?」リーチャーは、それを見て、微笑しながらヒッチハイクを続けるのでした。
2.トム・クルーズの持病
トム・クルーズの公表によって広く認知されるようになった失読症は、実は英語圏で10~20%の人に発現しており、あのスティーブン・スピルバーグやオーランド・ブルームも長い間悩まされていたといいます。
「失読症」とは、学習障害の一種で、文字の音と意味の理解が著しく困難な障害で、脚本がある限り”音読”とは無縁になれない俳優にとって、失読症は致命的な障害と言えます。
当然、脚本が読めないトム・クルーズは長い間、テープに録音してもらったセリフを覚えていたといいます。さらに、読めないという障害は、理解力にも支障をきたしてきます。「トップガン」の撮影時のトム・クルーズは既に22歳だったのですが、操縦理論が理解できずに、レッスンを投げ出してしまった経緯もあったようです。
しかしトム・クルーズは見事に失読症を克服して操縦ライセンスを取得しました。なんとトム・クルーズは、大人になってから傾倒した新興宗教・サイエントロジー教会の「勉強の技術」によって、この病気を克服したそうです。
3.トム・クルーズ 本当の身長体重は?
トム・クルーズは身長170㎝で、体重67㎏を公称しています。体重には特に異論はありませんが、本当の身長は163~168㎝なのでは?とか、シークレットブーツを愛用しているとか、トム・クルーズの身長詐称の噂は世界の通説になっています。
そのトム・クルーズのコンプレックスを日本テレビ「スッキリ」がイジッてしまいました。映画のプロモーションでスタジオを訪れたトム・クルーズに、番組側が”雪駄”をプレゼントしたことが全ての元凶で、もちろん彼は喜んだのですが、直後にウエンツ瑛士が「もしよかったら、これ今履い」と言ったとたんに通訳の戸田奈津子が「それは無理です!」と制止しましました。
きっと、そのとき周りは、ウエンツ瑛士のバカさ加減にあきれ、戸田奈津子の気遣いに安堵したでしょう。
4.まとめ
前作『アウトロー』に比べ、リーチャーのキャラが変わってしまいました。原作は23作あり、トム・クルーズの『ミッション・インポッシブル』のイーサンの対比的なキャラでシリーズ化を期待しましたが、前述のようにトム・クルーズは、興行的に不振だったためもあってか、この作品を最後に出演しないと言っています。
『コラテラル』からのハードボイルドタッチが、普通の正義を愛するオッちゃんになってしまえばもう続きは要りませんんね。
思うにシリーズ化されたものは、当たり前ですが第2作が1作目よりヒットしないと続かないようです。ただ、続編である第2作がヒットするのもあまりなく、ヒットしたからこそシリーズが続くのでしょう。