この映画『禁断の惑星(Forbidden Planet)』はアメリカ合衆国、1956年公開のSF映画です。監督はフレッド・M・ウィルコックス、主な出演者はウォルター・ピジョン、アン・フランシス、レスリー・ニールセンなどです。
『ウルトラマン』の10年前のSFXの影もない、特撮時代の映画です。そのつもりで観ると非常に面白い映画です。
目次
1.紹介
SF映画が、非現実的な世界を描く単なる娯楽作品だった時代に、斬新なアイデアと洗練されたデザインなど、当時の常識をくつがえす内容で世界に衝撃を与えた映画史上に残る作品です。
本作は、1950年代のSF映画の中でも傑作のひとつとされ、現代SF映画の前身とされています。今観ても古臭さを感じないセットのデザインの素晴らしさに加え、初登場シーンで観客を驚かせるアン・フランシスの美しさは際立ち、そのファッションも注目されました。
当時の最先端技術を駆使した特撮は絶賛され、第29回アカデミー賞では、殊効果賞にノミネートされました。
2013年には、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でです。
2.ストーリー
1)プロローグ
宇宙移民がはじまった2200年代。ジョン・J・アダムス船長(レスリー・ニールセン)が率いる宇宙船C-57-Dは、20年前に移住しその後連絡を絶った移民団の捜索のために、アルタイル第4惑星(アルテア4)へ着陸しました。
2)謎の生存者
アルテア4移民団の生き残りは、エドワード・モービアス博士(ウォルター・ピジョン)と、アルテア4で誕生した彼の娘であるアルティラ(アン・フランシス)のわずか2名と、博士が作り上げたロボット・ロビーだけでした。
博士は捜索隊に対して、アルテア4にはかつて、極度に発達した科学を創り上げ進化した「クレル人」が先住民族として存在したが、原因不明な理由で突然滅亡した、と告げました。そして移民団は正体不明の怪物に襲われ、自分たち2名と彼の妻(後に別の理由で死亡)以外は死んでしまったといいました。
3)正体不明の怪物
残った博士は、クレルの遺跡に残っていた巨大なエネルギーを生成する設備を分析して使用し、博士自身の能力を飛躍的に増進させていました。ロビーもその結果出来たものです。
さらに彼は、おそらくC-57-Dも怪物に襲われるだろうと予告し、一刻も早くこの星を離れるよう求めました。そして博士の言葉通りにふたたび現れた怪物はC-57-Dを襲撃、乗組員を殺害し始めました。
しかしアダムスは、アルティラと恋仲となったこともあり、即時の離陸を拒否し、博士とアルティアを、あるいはせめてアルティラだけでも、地球に連れ帰ろうとします。
4)怪物の脅威
いよいよ怪物の猛威が彼らに迫ったとき、クレルの遺跡のエネルギーが最大出力に達していたことに気付いたアダムスは博士を問い詰めます。そして彼は、怪物の正体が「イドの怪物」とでも呼ぶべき、博士の潜在意識、自我そのものだということを見破ります。
移民団やC-57-Dの乗組員を襲った怪物も、実は遺跡の装置によって増幅され具現化した博士の潜在意識(憎しみ)のなせるわざだったのです。そしてクレル人も、自分たちの潜在意識を制御しきれず、巨大なエネルギーでお互いに殺し合い、自滅したのでした。
5)モービアス博士の最後
怪物はアダムスや博士達に襲いかかってきます。博士はロビーに怪物を攻撃するよう命じますが、元が主人である怪物を撃つことが出来ません。自らの心の暗黒面を正視した博士は、怪物の前に立ちふさがります。
怪物は消滅しましたが、博士は瀕死となります。彼は遺跡の自爆装置を作動させ、アルテア4もろとも滅びる道を選びました。アダムス船長は、アルティラとロビーを伴ってC-57-Dに戻り、生き残ったクルーとアルテア4から離脱しました。
6)エピローグ
そしてアルテア4が爆発するのを見て、父の死を嘆くアルティラを抱きしめ、我々は神ではないことを教えてくれたモービアス博士の名は銀河を照らす灯台となるだろうと語りました。
3.四方山話
1)草分け
本作『禁断の惑星』は、後のSF映画で用いられる多数の要素を開拓しました。SF映画として初めて人類が自ら作り上げた超光速宇宙船による恒星間移動を描き、地球から遠く離れた別星系の惑星のみを舞台とした最初の映画でもありました。
SFに限らず、純粋な電子音楽(Bebe and Louis Barron提供)を初めて用いた画期的な作品でもありました。
2)ロビーの登場
ロボットのロビーは、足を付けただけの「ブリキ缶」ではないロボットとして映画に登場した最初期のキャラクターで、ロビーには明確な人格が与えられており、脇役として重要な役割を演じています。
後のSF映画に多大なる影響を与え、ロビーが活躍する『宇宙への冒険』(1957年)が公開されました。
SFに登場するロボットのひとつのモデルを確立し、『宇宙家族ロビンソン』(1965年)のフライデーや『スター・ウォーズシリーズ』のR2-D2は、ロビーの直系の子孫であると言えるでしょう。
3)テンペスト
シェイクスピアの『テンペスト』に類似した舞台設定、精神論的なセリフが多用され、難解で、プロットの一部に同作と対応する部分があるため、公開当時はそれにたいして否定的な意見もありましたが、大まかな意味での翻案とみなされ、後に評価が更に高まった作品です。
4.まとめ
「ロビー」という元祖AI汎用ロボットをはじめ時代を超えたデザインにまず掴まれ、スペーシーな効果音は、我々日本人にもお馴染みで、後の日本産特撮物でも多用されています。
また、クルーの制服はウルトラマンの科特隊にも受け継がれているようにもみえます。
本作がいかに現代のSF映画に影響を与えてきたかよくわかりました。