映画『突破口』ハードボイルドっぽい良くできた逆転犯罪映画です?!
目次
1.紹介
1968年に発表された、ジョン・H・リーズの小説”The Looters”を基に製作された作品で、製作、監督のドン・シーゲルをはじめ2年前に公開された『ダーティハリー』(1971年)のスタッフ、キャストの何人かが参加した作品です。
いかにもドン・シーゲルらしい、飛行機をうまく使ったハードなアクションも見応えがあります。
2.ストーリー
1)プロローグ
元スタント・パイロットのチャーリー・ヴァリック(ウォルター・マッソー)は、妻のナディーン(ジャクリーン・スコット)とハーマン・サリヴァン(アンディ・ロビンソン)らと共に小銭の狙って地方の小さな銀行を襲います。
2)襲撃の失敗
しかし、使った盗難車のナンバーから警察に気づかれてしまい、ナディーンは重傷を負ってしまいます。現金を奪うことに成功したヴァリックらは逃走しますが、途中でナディーンは息を引き取ってしまいます。
逃走した車に爆薬を仕掛けて、ナディーンの遺体を残し、チャーリーとハーマンは農薬散布会社の車に乗り替え、警察の捜査網を突破して逃げ切りました。
3)驚きの戦利品
隠れ家に戻ったチャーリーらは、奪った現金が7万5000ドル以上の大金だったので驚きます。小さな銀行なので、せいぜい3万ドルくらいの現金だと踏んでいたチャーリーは、2000ドルの被害というニュースの報道も気になりました。
盗んだ現金が、マフィア絡みかと心配するチャーリーは、金を返すことも考えますが、ハーマンは反対し、ハーマンは、飛行機が操縦できるチャーリーに、メキシコへの逃亡を提案しました。
その後、チャーリーは歯科医院に侵入し、焼死体で発見されたナディーンのカルテを抜き取り、ついでに自分のとハーマンのカルテをすり替えました。
4)マフィアの追手
銀行家でありながら、マフィアと関係しているメイナード・ボイル(ジョン・ヴァーノン)は、殺し屋モリー(ジョー・ドン・ベイカー)に犯人の追跡を任せます。
ボイルは、今回の件で、自分達が組織から疑われていることを、銀行の支店長ヤング(ウッドロー・バーフリー)に伝えました。
チャーリーは、写真家のジュエル・エヴェレット(シェリー・ノース)を訪ね、偽造パスポートを作らせます。
そこを探ったモリーは、チャーリーの隠れ家を見つけてハーマンを殺しました。
5)罠、続いて罠
チャーリーは逃走の準備を進め、ボイルと連絡をとるために、彼の秘書シビル・フォート(フェリシア・ファー)に近づきます。
ボイルを飛行場に呼び寄せたチャーリーは、モリーが見ていることを承知で、ボイルと親しげな態度をとりました。
モリーは、それを見て二人が組んでいると決めつけ、ボイルを車で轢き殺してしまいます。
飛行機で逃げようとするチャーリーを、ついに追い詰めたモリーは、金の在り処を聞き出しますが、チャーリーの仕掛けた罠でモリーは爆死しました。
6)エピローグ
そしてチャーリーは、燃え上がる車に、歯科医のカルテでは、死んだことになっているハーマンの死体を残し悠然と立ち去るのでした。
3.四方山話
1)カメオ出演
ヒッチコックをオマージュしているのか、ドン・シーゲルが、賭けピンポンをしている場面で目立たなく出演しています。
2)ドン・シーゲルの転機
本作は、それまで雇われの職人監督であったシーゲルが『ダーティハリー2』の依頼を断り、自身のプロダクションを立ち上げて作った作品です。アメリカではクエンティン・タランティーノが『パルプフィクション』の台詞でオマージュを捧げています 。
3)主役
ドン・シーゲルらしい、明快な筋立てやハードなアクションも見応えがあって、思わず、主演がクリント・イーストウッドであったならと想像してしまうほどです。
ドラマの中で、偽造パスポート屋のシェリー・ノースのところを訪ねたジョー・ドン・ベイカーが名を名乗ると、彼女が振り向きもせずに、「クリント・イーストウッドじゃないわね」というシーンもありました。
そのイーストウッドとは全くタイプの違う、ウォルター・マッソーが、一発逆転の仕掛けで完全犯罪を仕込んでゆき、なかなかクールに演じています。
4)脇役
『ダーティハリー』のスコーピオン役や本作のハーマン役のようにちょっとイカれたヤカラが適役のアンディ・ロビンソンはここでも見事にハマっています。
4.まとめ
売り物の飛行機VS自動車チェイスですが飛行場でもない荒れ地の追っかけっこなら、飛び上がらない限り勝負は自動車が圧倒するはずで、その辺が少し不満だったのですが、そこは上手にひっくり返って決着しました。
ストーリー、アクション、キャストとこの時代としては、申し分のない良作でした。