凸凹玉手箱

A Post-Baiby Boomer

映画『馬上の二人』晩年のジョン・フォードの秀作西部劇です!!

この映画『馬上の二人(Two Rode Together)』は、監督ジョン・フォード、主演はジェームズ・スチュアート、共演で、リチャード・ウィドマーク、シャーリー・ジョーンズの 1961年の西部劇映画です。

目次

 

 



1.紹介

ウィル・クックによって書かれた1959年の小説「Comanche Captives」を基にしていて、、コマンチにさらわれた白人を救い出そうとする人々の姿を、ジョン・フォードらしく情愛やユーモアをまじえ、人間の悲しみ、または傲慢さを鋭く描く晩年の秀作です。

原作がしっかりしているためか、ストーリーの展開が素晴らしく、老獪なジョン・フォードの演出に円熟のキャストが応えていて、もっと評価されて良い作品です。


2.ストーリー

1)プロローグ

テキサスにあるタスコサ町の保安官であるガスリー・マッケンジージェームズ・スチュアート)は陽気な性格の人間でした。そこへ、町から60キロ離れたグランド砦にいる旧友のジム・ゲイリー中尉(リチャード・ウィドマーク)がやって来ました。

グランド砦の司令官であるフレーザー少佐(ジョン・マッキンタイア)がガスリーを呼んでいるとジムは伝えます。ガスリーは、町にあるバーでママをしているベル(アネル・ヘイズ)のしつこい求愛に呆れていたため、二つ返事でグランド砦へと向かうことになりました。


2)難しい仕事

ガスリーはジムの連れてきた部下達と共にグランド砦を目指します。彼らがグランド砦へと着くと、近くにいた開拓民はまるでヒーローを見る目で彼らを見ます。彼らなら助け出してくれる、と何かを期待しているのでした。

フレーザーはガスリーにある仕事を依頼します。それはコマンチ族のところへ行き、20年間の間に拐われた白人を助け出すという仕事でした。

ガスリーは危険な仕事だと言ってそれを断ります。しかし、月給80ドルと白人1人の救出につき500ドルという破格の条件を出し、勝手に開拓民と交渉するとして仕事を引き受けました。



3)拉致された者

マーティ(シャーリー・ジョーンズ)という開拓民のブロンド娘は、弟がコマンチ族に拉致されたことを悲しんでいました。彼女も保安官達が弟を救い出してくれることに期待していたのでした。

マーティは、ジムに弟のことを話します。弟が拐われたのは自分のせいだとマーティは強く自分を責めるのでした。

翌日、ジムはマーティをガスリーに紹介し、弟を助けて欲しいと頼みます。しかし、酔っ払っていたガスリーはマーティに酷いことを言い、彼女を傷つけるのでした。


4)コマンチ族のもとへ

ガスリーとジムは開拓民と離れてコマンチ族のもとへと向かいます。しかし、いきなりコマンチ族に捕まってしました。

兵隊だとバレてしまった2人は確保されましたが、そこで世話役として現れたのがハンナ(メエ・マーシュ)という名前の女で、開拓民の中にいた兄弟の母親だったのでした。ガスリー達はハンナから、白人に関する情報を聞き出しました。

ガスリー達は、持って来た銃と引き換えにウルフ(デビッド・ケント)という少年とワカナ、そしてエレナ(リンダ・クリスタル)を取り返すべく、コマンチ族の族長クアナ(ヘンリー・ブランドン)と交渉します。

それに応じたクアナがワカナとウルフを連れて来るが、すでにコマンチ族として育ってしまった彼に、白人としての面影は一切なかったのだった。

結局ガスリー達は、ウルフという少年と、コマンチの戦闘部族のリーダーであるストーン・カルフ(ウディ・ストロード)の妻のエレナを連れて帰ることにするのでした。しかし、ストーンを殺すかどうかでガスリーとジムは喧嘩別れしてしまいます。


5)ダンスパーティー

ジムは、ウルフを連れて開拓民のもとへと帰って来ました。しかし、ウルフを見て白人だと信じる開拓民は一人もいません。フレーザーは、銃を交渉に使ったガスリーを黙認したこと、さらにはハンナを置き去りにしたことを非難するのでした。

その頃、エレナがガスリーに過去を語り始めます。エレナは、アメリカ陸軍の男と結婚するためにアメリカへと向かう途中、コマンチに襲われてしまったのでした。そこへ、突然ストーンが姿を表し、ガスリーはストーンを撃ち殺しました。

ウルフはメアリー(ジャネット・ノーラン)という開拓民の夫妻が引き取ることになりました。その頃、エレナを連れてガスリーが帰って来ます。

ジムはマーティをダンスパーティーへと誘いました。ジムは彼女に惹かれていたのです。その頃、エレナは開拓民達の冷たい視線に苦しんでいました。ジムはエレナに、ダンスパーティーへと行くことを勧めるのでした。

ダンスパーティーでジムはマーティにプロポーズします。一方、エレナはみんなに避けられてしまいました。エレナは意を決して自らの過去をみんなの前で話し出す。さらに、ガスリーとジムがエレナのことを避けた士官達を非難するのでした。


6)残酷な結末

その夜、メアリーがウルフによって殺されてしまいます。開拓民は怒り、一斉にウルフに襲いかかりました。そのとき、マーティが弟の形見として持っていたオルゴールにウルフが反応し、自分のものだと叫ぶのでした。

しかし、裁判にかけられたウルフは有罪になり、絞首刑になってしまいます。ウルフが弟だと気づいたマーティはオルゴールを投げ捨て、泣き喚くのでした。


7)エピローグ

ガスリーとジムがエレナと共にタスコサ町へと戻ります。しかし、バーでベルに侮辱されたエレナはカリフォルニアへと向かうことにしました。

ガスリーはエレナを追いかけ、一緒にカリフォルニアへと向かうのでした。


3.四方山話

1)集大成

本作の翌年のフォード作品『リバティ・バランスを射った男』(1962年)の出演者をはじめとした、フォード一家総出演と言っていい程の配役それぞれを、バランスよく演じさせたフォードの演出は天下一品で、彼が、仲間達に感謝を込めて作った、集大成のようにも感じます。


2)キャスティング

ジェームズ・スチュワートは、「アメリカの良心」とも呼ばれていましたが、本作では、その「アメリカの良心」とは真逆の役柄です。

彼が演じる保安官ガスリー・マケーブは保安官の給料のほかに店々からみかじめ料として売り上げの一部をかすっているやくざのような人物なのです。

ゲイリイ中尉を演じるのはリチャード・ウィドマークで、悪役を演じることも多い彼ですが、本作では実直な軍人役です。一見、ジェームズ・スチュワートリチャード・ウィドマークの役が逆ではないかと思ってしまうほどでした。

二人は、正に名優、どんな役でも魅せてくれます。


3)族長クアナ

本作のクアナは、1840年代後半~1911年2月23日の実在の人物です。コマンチで最も偉大な指導者は、コマンチと白人女との混血のクアナ酋長で、母の姓をつけ「クアナ・パーカー」と呼ばれますが、クアナはこの白人の呼び名を非常に嫌い、「クアナ(薫り高いという意味)」とのみ自称しました。

自身勇猛な戦士として略奪部隊を率いましたが、19世紀末、ララミー砦条約による白人の保留地政策を受け入れました。コマンチの開化に尽力し、「ネイティブ・アメリカン教会」の始祖としても知られています。

生涯、伝統的なコマンチとして生き、彼が死んだのちには、その栄誉を称え、コマンチは以後「酋長(チーフ)」の名称をコマンチ族から廃止しました。

クアナが「コマンチェ最後の酋長」と呼ばれるのはこのためです。


4.まとめ

本作は、軽妙で軽妙でテンポの良い会話のやり取りで始まり、軽いタッチの西部劇かのようでしたが、話が進むにつれてそれぞれの立場人間の身勝手さが見えてくきます。実は奥深いストーリーの映画でした。